現在のAIの進展は、しばしば「科学技術の大進歩」として語られる。しかし本質的には、蒸気機関や電力、半導体の発明といった“技術文明の断絶的転換”というより、インターネット革命がもたらした流れの延長線上で起きている、最新かつ最大の変化と捉える方が理解しやすい。
インターネット革命の本質は、「情報がデジタル化され、世界中で瞬時に共有・複製・処理できるようになったこと」にある。人間の知識、言語、画像、音声、行動履歴までもがデータとして蓄積され、ネットワーク上で相互接続された。AIは、この膨大に集積されたデジタル情報を前提として初めて成立している。もしインターネットが存在せず、データが分断されたままであれば、現在のAIは成立しなかった。
つまりAIは、「新しい物理法則の発見」や「未知の自然現象の解明」から生まれた技術ではない。インターネットによって整備されたデータの海、計算資源の集中、クラウドという分散処理基盤の上で、既存の数学・統計・計算理論を極限までスケールさせた結果として現れた存在である。
この視点に立つと、AIの影響力が社会全体に急速に広がっている理由も見えてくる。インターネットが情報流通や経済活動、コミュニケーションの在り方を根本から変えたように、AIはその「上流」に入り込み、検索、翻訳、創作、意思決定支援など、知的活動そのものを再編成し始めている。これは革命の“第二幕”ではなく、インターネット革命が成熟段階に入り、次の形へ進化している過程だと言える。
重要なのは、AIを魔法のような超技術として恐れたり過度に神格化したりすることではない。むしろ、インターネットが社会制度や産業構造、民主主義の形まで変えたように、AIもまた「既存の延長線上にあるが、影響は極めて大きい技術」として冷静に位置づけることが必要だ。
AIは突然現れた異物ではない。
それは、インターネットが積み重ねてきた25年以上の歴史が、ひとつの臨界点を越えて姿を変えた結果なのである。
自民党デジタル社会推進本部長 #平井卓也
渋谷のスクランブル交差点近くのライブハウスで開催されたAIのイベントにて





