世界最先端のIT国家実現のための申入れ
平成十六年六月八日
自由民主党 政務調査会
e―Japan重点計画特命委員会
委員長 額 賀 nu郎
わが党は、「e―Japan重点計画」の着実な実施をはじめ各般のIT施策を精力的に審議・実施してきたところである。
 IT革命は、産業革命に匹敵するものであり、情報流通コストの劇的な低下や高度な情報のやり取りを通じて、より効率的な二十一世紀型の経済社会システムの構築やわが国の国際競争力の強化、新たな文化の創造に資するものである。
「世界最先端のIT国家となる」との国家目標の達成期限は来年に迫っているが、わが国のIT化は、高速インターネットの整備などの分野において大きく進展し、目覚ましい成果を上げた反面で、ITの利用面においては、必ずしもその進展が芳しい分野ばかりではない。今後は、IT利用を一層促進するとともに、IT利用を促進するための規制改革に取り組み、この目標の確実な達成を図る必要がある。
 このため、e―Japan重点計画特命委員会において、これまで審議・検討を行ってきた結果を踏まえ、今般、早急に実施すべき重要施策を以下のとおり、取りまとめた。
 政府においては、この申し入れの内容を確実に実現するよう、強く要望する。
一.二〇〇五年世界最先端のIT国家実現を確実にする施策の推進
(一) 教育の情報化、医療の情報化、港湾のワンストップ化など、ITの利活用を一層推進すること。
(二) セキュリティ対策の強化、コンテンツ流通の促進、電子政府・電子自治体の構築、デジタル・ディバイドの是正など、世界最先端のIT国家実現に資する施策を加速化すること。
(三) トレーサビリティやセキュリティなどへの応用を目指した電子タグ・システム、ユビキタスネット社会の基盤として期待される情報家電のネットワーク化、モバイル型等の高度な地上デジタル放送、IPv6に基づくネットワーク化など、わが国の優位性をさらに高める先端的技術開発とその実用化などを推進すること。わが国が先導して開発した技術については、アジア諸国との連携等を通じ、国際標準の形成に努めること。
また、高速電力線通信については、諸外国の動向を踏まえ、わが国の優位性をさらに高めるよう、電力線通信と無線通信との共存を可能とする技術の確立など、その活用を実現する施策を推進すること。
(四) 電子政府のシステム刷新(旧式(レガシー)システム見直しなど)による経費の節約分については、電子政府における高度なワンストップサービスの整備、インフラの地域格差是正など、IT分野の戦略的投資に活用すること。
二.ITによる地域再生とブロードバンドの地域格差是正
(一) 距離と時間を超越するITのメリットを最大限活用し、IT地域再生プロジェクトへの支援、IT利用に関する規制緩和などにより、ITによる地域再生を促進すること。
(二) 光ファイバ、ADSLなどブロードバンドサービスの地域的な情報格差(デジタル・ディバイド)を是正するため、光ファイバ網やケーブルテレビ、無線などのネットワーク整備への支援、地域公共ネットワークの整備・活用推進などにより、地域住民のブロードバンドへのアクセス環境を向上させること。
三.医療・教育の情報化、IT人材の育成
(一) 医療の情報化
  1. 医療分野の情報化が遅れていることを踏まえ、評価手法(PDCAサイクル)を積極的に導入し、詳細な目標年次、具体的な成果目標を本年中に明らかにするとともに、医療情報化関連施策の加速化を図ること。
  2. 電子カルテの普及により医療の質の向上と医療機関の経営効率化を図るため、医療とITの両分野に精通した人材の育成を図るとともに、電子カルテの連携活用を行う医療機関に対するインセンティブ措置(例えば、診療報酬の加算)について検討すること。
  3. 電子レセプトの普及により診療報酬請求業務の効率化を図るため、電子レセプトを導入する医療機関に対するインセンティブ措置(例えば、支払期間の短縮、審査支払費用の削減)について検討すること。
また、審査支払機関における審査業務を電子レセプトへ一元化していくため、審査支払機関の業務、システムの改革を推進すること。
  4. 法令により医師等の記名押印が必要とされる診断書、処方せんなどの文書の電子化など医療分野の情報化を促進するための規制改革に取り組むこと。
(二) 教育の情報化とIT人材の育成
  1. 教育の情報化は、わが国のIT化を促進するための基盤となる施策であり、いつまでにどのような人材をどう育成するかといった中長期的な計画を明らかにするとともに、IT活用による教育効果などを事後的に評価し、その結果に基づき、戦略的な人材育成に努めること。
  2. 情報社会に主体的に対応できるよう、学校のIT環境の高度化を早急に推進するとともに、ネットワーク上の倫理やモラル教育の充実などを含め、児童の情報活用能力の育成を図ること。
また、教育用コンテンツの制作や供給において、民間の活力が十分発揮されるための環境整備を行い、コンテンツの充実を図ること。
  3. 教員採用の試験にITリテラシーに関する科目を導入するなど、教員のITに関する指導力の向上を図ること。
  4. 不足が指摘される高度なIT人材については、これまで必要とされてきた情報通信産業、ソフトウエア産業等のIT産業分野のみならず、医療、農業等の利用分野においても今後その必要性がますます高まる。
このため、必要となる知識・技術の体系化・標準化とこれに対応したカリキュラム、教材開発など、人材研修の高度化により、高度なIT人材の育成を推進すること。
また、人材育成の面においてアジア諸国との連携強化に努めること。
  5. 現在実施されている特区での実験を踏まえたインターネット大学・大学院の設置基準の緩和など、教育の情報化を促進するための規制改革に取り組むこと。
四.簡素で効率的な電子政府の構築
(一) 行政ポータルサイトの充実、電子政府の総合窓口(e―Gov)を活用したワンストップサービスの整備、年間申請件数の多い手続の簡素化・合理化の徹底などにより、高度な行政サービスを実現し、国民による電子政府の利用を促進すること。
(二) 以下のとおり業務・システムの抜本改革を進め、行政組織等の減量・効率化、IT投資の合理化を実現し、ITによる行革を強力に推進していく必要がある。
  1. 業務・システムの最適化計画の策定にあたっては、行政の効率化・合理化に係る効果・目標を数値により明らかにすること。
2. 各府省に共通するシステムについては、重複投資を排除するため、政府全体で一元的なシステム構築を行い、全府省が利用するようにすること。
3. レガシーシステムの改革にあたっては、システム構成及び調達方式の抜本的な見直しを行うとともに、徹底した業務改革を断行し、30〜50%のシステムコスト削減及び業務運営の合理化を実現すること。
4. システムコストについては、システム開発コスト、保守ライセンス料等のシステム維持運用コストに加え、通信費、施設利用費などシステムを保有していくためのコストをトータルとして捕らえて検討すること。
5. 電子政府の構築にあたっては、世界に先駆けてIPv6への移行を推進するため、政府調達においてIPv6対応システムを順次導入するなど、新たな技術革新の成果を積極的に取り入れること。
6. 国家公務員のテレワークについては、制度環境整備を行うとともに、テレワーク勤務率の目標設定などを通じて導入の促進を図ること。
7. 以上のほか、別紙「旧式(レガシー)システムの見直しに関する申入れ」に従い、改革を進めること。
(三) CIO補佐官が順調に機能している先進的な府省の事例を参考に、IT投資に係るマネジメントサイクルの確立などに関してCIO補佐官の活用方策を検討し、各府省はCIO補佐官を活用した体制の充実に努めること。
各府省は、研修などの充実により職員のITリテラシー向上に努め、内部人材の全体的なレベルアップを図ること。
(四) 電子政府関係予算については、モデル事業を活用し、予算執行の弾力化を図るとともに、より簡素で効率的な電子政府を構築するための予算フレームについて検討すること。
また、業務・システムの最適化に係る予算について、最大限に配慮すること。
(五) 輸出入・港湾手続について、早急に「国際海運の簡易化に関する条約(FAL条約)」の締結及び国内法令の規制改革を行うこと。
また、利用者にとって真に便利で使いやすいワンストップサービスを実現するため、諸外国の状況や経済界などの意見を十分聴取しつつ、輸出入・港湾手続全般の抜本的な業務改革について検討し、本年末までに基本的考え方を取りまとめること。
五.デジタルアーカイブの構築・利用促進
(一) 国立国会図書館によるウェブアーカイブの構築など
  1. 国立国会図書館がウェブアーカイブを構築するための法律を次期通常国会に提出するとともに、ウェブアーカイブを構築するために必要な経費について、予算措置を講ずること。
  2. 以上のほか、別紙「デジタル・アーカイブの推進に向けた申し入れ」に従い、施策を推進すること
以 上