『コンピュータ&ネットワークLAN』12月号(オーム社)創刊20周年特別企画
ITジャパナイゼーションで復活する 黄金の国ジパング!!

1.黄金の国ジパング復活の鍵となる「ITジャパナイゼーション」
2.ユビキタス時代こそジャパナイゼーション発揮のチャンス
3.(株)デンソー 取締役社長 岡部 弘氏インタビュー
  ジャパナイゼーションを成功に導く日本の「技能」
4.内閣府副大臣 伊藤 達也氏インタビュー
  Tジャパナイゼーションはe-Japan構想をどう活性化させるか
5.衆議院議員 平井 卓也氏インタビュー
  ジャパナイゼーションは通信・放送をどう活性化させるか

6.開発から製造、リサイクルまでのバーチャル・プロセスが実現させた日本型ものづくり

ジャパナイゼーションは通信・放送をどう活性化させるか
独自に進化した経験を活かして日本流デジタル放送に取り組む
奥井: 放送は、今後もうまくいくという保証はありませんよね。
平井: 従来のように、単にテレビを見るだけというニーズとジャンルは存続するでしょう。
しかし、今後国民のニーズとして、たとえば双方向でないといけない、ということからテレビがコンピュータ化したり、コンピュータがテレビ化したりする、つまりは通信と放送の融合はあるかもしれませんね。
奥井: その一方で、日本には、品質に伴う高コスト志向もありますよね。
平井: たしかにそうで、日本でなぜあれほどADSLが普及したのか、しかもISDNという対抗馬がありながらもです。これは、まさに品質が効いています。たとえば米国などでは少々回線がダウンしても気にしません。ところが日本人はそこにこだわって、回線技術者の職人芸で絶対にそんなことが起きないよう気を使っています。つまり必要以上の品質にこだわり、高コストを生んでいます。
奥井: デジタル放送についてはいかがでしょうか。
平井: 日本は1997年の時点で、デジタル放送は世界の趨勢になるという判断のもと、欧米追随型でデジタル放送に踏み切りました。しかし、アメリカもイギリスもスペインもイタリアも、そしてドイツも取り組んでみたらうまくいかない。結局コストばかりかかって、国民のメリットが顕在化しないのです。そこで、ここに新しいジャパナイゼーションが必要となり、それを今提案しています。すなわち、諸外国の失敗に学んで、日本流のデジタル促進を考えるべきなのです。失敗例に追いついても意味はありません。急ぐことのリスクは避け、現状分析を行って、今後の手順をゆっくりと検討するという方法を取り入れるべきです。
爛熟期の日本には世界に発信できるコンテンツも豊富
奥井: 通信や放送のコンテンツが整備された後、その上でサービスするコンテンツはどうなっていくのでしょうか。
平井: そこが重要です。次の世代の日本のクリエータは、海外で通用するものを作れると思います。それもジャパナイゼーションが進化した形でしょう。
奥井: その兆候は見えますね。現に、浜崎あゆみ他、日本のシンガーたちが東南アジアではスーパースターになりましたね。国としては、コンテンツ育成に対してどのようなスタンスをとるべきでしょうか。
平井: それは、コンテンツの価値を認めるシステム作りでしょう。とくに海外進出を考えますと、著作権保護が重要になってきます。ゲームの世界も、まさにこの要素が不可欠ですね。
奥井: ただ、クリエータを国で支援するというのも少し違和感がありますね。
平井: そこには、クリエータが認められるような環境作りが重要になるのです。たとえば、スペインでは100年周期で数名の天才画家が生まれると言います。これは、ある意味では国策と言えます。そのために、できうる限り多くの人の作品を見たり審査に参加させたり、あるいは美術館を作って、場合によっては観光資源にも利用しますね。アメリカの場合、映画がそうです。
奥井: 日本でも、最近やっとその傾向が出てきました。宮崎アニメなどは、日本が世界に誇る作品でしょう。
平井: サッカーアニメの「キャプテン翼」などは、今ヨーロッパの子供たちが夢中になっていますね。ポケモンもそうでしょう。これは、かつて浮世絵が欧米の人たちに買われてしまい、日本からなくなってしまったという現象によく似ています。
奥井: 今のアニメやゲーム、あるいはカラオケなどもそうでしょうが、ジャパナイゼーションから見ますと、100年後はその浮世絵のように、とても日本的になっているかもしれませんね。このように、今、日本的なものが海外に大量に発信されつつありますが、われわれ日本人はそこをあまり自覚していないようです。これをもっと自覚して、さらにコンテンツを世界に向けて発信できる環境が整えば、日本は本格的な爛熟期に入るのかもしれません。日本の歴史は100年サイクルで変動しています。つまり、戦争が起こり、新体制が確立し、この体制下で文化の爛熟期を迎え、そして崩壊するというサイクルですね。そう考えますと、今はまさにこの爛熟期とも思えます。この歴史サイクルから見ましても、日本的なものが出てくるのは、すべて爛熟期においてなのです。たとえば平安時代においては漢字からひらがなが誕生し、室町時代には床の間、畳や茶道などが、そして江戸時代には浮世絵や歌舞伎が、といった具合ですね。また、おもしろいことに爛熟期は、平安時代には遣唐使が廃止され、江戸時代には鎖国に入るといったように、海外との関係が薄くなったときでもあるんですね。いまの日本も少しこれに類似したところがあります。つまり、歴史から見れば、今は日本にとって最大のチャンスを迎えており、大変おもしろい時代にわれわれは生きていると思います。
通信と放送、さらなるジャパナイゼーションめざして
奥井: 通信や放送について、今後日本はどうすべきでしょうか。
平井: 競争原理で取り組むものと、国民に対して責任をもって取り組むものとをきちっと分けるべきでしょう。たとえば、NTT東西は今、経営が悪化しつつありますね。NTTの自由化と競争政策を両立させるためには、東西で分離するのではなく、インフラ卸会社とサービス会社に分離するなど、全く新しいNTTのあり方についても柔軟に検討する必要があります。
奥井: それはすばらしい発想ですね。
平井: NTTが電話交換網を維持できなくなるのは明らかです。その維持コストが、他の料金に転嫁される。そうであれば、ここには国の資本を投入するか、国有化してしまうという考え方もあります。もちろん、将来のIP電話を考えて頑張ることができる分野があれば、それはそれで頑張ればよいのです。今後を考えますと、日本は規制緩和で新規参入するものと、丁寧な仕事で基幹インフラを守っていくものとに分けて取り組むべきでしょう。
奥井: 私はマスコミに苦言を呈したいのですが、彼らはこの10年日本はダメダ、ダメダと言い続け、失われた10年とさえ言っています。しかし、70%も輸出が伸びて成長し、その結果GDPや賃金、家の広さなど、主要国の中でもトップとなりました。どうみても豊かであり、とても失われた10年とは言えません。そこを、金融問題だけ取り上げて、その傷口に塩を塗りたくっているのです。これでは、日本は元気になれません。
平井: 私もそう考えます。日本の環境を見てみましても、四季があるということが文化の発展に大きく寄与します。通信・放送もしかりです。日本もまんざら捨てたものではありませんよ。
奥井: いずれにしましても、この爛熟期の日本で、インフラの整備とともに世界に発信すべき日本的なコンテンツも出てきています。前向きに自信をもってチャレンジできる、好機と考えるべきですね。