「電子政府について」

【経緯】

1999年12月小渕政権下のミレニアムプロジェクトで本格的な議論が始まった電子政府の構築は、2001年1月森政権下に発表された「e-japan戦略」を経て、来年2003年の実稼動に向け中央省庁や地方自治体でも本格的な実施段階に入った。電子政府は、政府が推進するIT関連施策の中でも最大のプロジェクトであるはずなのに、その目的と効果を本質的に理解している人はそれほど多くはない。電子政府を実現するために最新のIT導入が必要になることは間違いないが、ITはあくまでも手段であり、根本的な業務の見直しが前提にならなければ、効率化どころか財政悪化を招くだけである。電子政府とは、「高度なIT装備を実現した政府」ではなく、「効率的で透明性の高い行政組織をIT導入によって実現した政府」であることは今更言うまでもない。ここでは今世紀最初にして最大のプロジェクトである電子政府の本質論をその段階ごとにご紹介したい。

【第一段階−フロントオフィス】

電子政府と聞いて、まず初めに連想するのが、自宅やオフィスからインターネット経由で行政情報の閲覧、申請、届出等の手続きをフルタイムで行えるといった窓口業務の利便性向上であろう。例えば、住民登録や印鑑証明、婚姻証、さらには引越しの際に一箇所に住所変更の届出をすれば転入も転出も一括して処理できる、などの手続きサービスの向上は確かに実感しやすいメリットである。しかし、電子政府構築の比較的初期の段階から受けられるこのようなメリットは、電子政府全体の目的うち、ほんの一部分にしか過ぎない。

【第二段階−バックオフィス】

続いて、各省庁内部の業務の合理化があげられる。これは会計、人事、給与、共済など各省庁共通の基幹業務をIT活用によって根本的に改革する意味する。手続き革命が国民との接点、いわばフロントオフィスであることとの対比から、このような基幹業務の改革はバックオフィス改革とも呼ばれる。実は、このような基幹系のシステムに投入される予算や人員が非常に多く、また、縦割り行政の弊害からシステムも統一されていない現状では効率性は極めて低い。しかし、システムの標準化を目標にITを導入すれば、合理化・効率化の指標は数字で示されることになり、その達成度を比較・検討することもできる。その結果、行政コストの大幅な削減効果が目に見える形で期待できる分野でもある。

【第三段階−自治体改革】

電子政府も次の段階に入ると、現在約3300ある地方自治体の在り方、さらには市町村合併推進の考え方にさえも多大な影響を及ぼすようになる。電子自治体を支えるシステムをローコスト・ハイクオリティーなものにするためには、ある程度のスケールが必要となり、必然的に他の自治体との連携や統合が検討されるようになる。また、電子自治体にとって最重要課題であるセキュリティーの確保なども、小さな自治体が単独で対処するには限界があり、広域で取り組む方が断然有利である。その結果、電子政府は、地方自治体の競争を促進して、「地方の均衡ある発展」という横並びの思想さえも変えることになり、同時に、地域住民の判断によっては、求める行政サービスの内容さえも一律ではなくなるはずだ。福祉、経済、治安、教育、環境などの政策と並行して推進される電子自治体は、地域住民のニーズによって政策としての優先順位が決まってくるであろうし、ナショナルミニマムとしての電子政府はあるにせよ、それぞれの電子自治体の実現に関しては各自治体独自の戦略が問われることになる。

【第四段階−社会改革】

税収の自然増が見込めないこれからの時代には、少ない税金を如何に有効に使うかが最も重要な政治課題になってくる。そのために、効率的な行政システムである「小さな政府」を実現することは国民的合意事項になるはずだ。しかし、その前提として、国民一人ひとりが、自立した個人として共同体に参画し、自分に必要な行政サービスを選択する能力が必要になってくる。自治体サイドも、常に求められる均衡主義を見直し、差異及び格差を「健全な不均衡」として理解しなければならない。このような独自性を伸張させていくという考え方は、地方分権の過程においては間違いなく時代の要請であるといえよう。また、電子政府実現のためのIT導入は、当初から大きな経済効果が見込まれ、次の世代にとっても新しく付加価値の高い産業を興すビジネスチャンスになるだろう。電子政府は規格大量生産の近代工業化社会から次の時代へ進むためのパスポートであり、構造改革後の日本のあるべき姿を示してくれる道しるべになると確信する。そして、電子政府が更なる進化を遂げることができたならば、日本は多くのハンディを乗り越えて世界で最も暮らしやすい最先端のIT国家となり得るのである。