デフレと闘い、新時代をひらく [Page3]
〜 日本経済を甦らせるために 〜
三.新時代を担うべき産業を強力に支援する
日本経済がいま直面している構造的かつ複合的な不況から抜けだし、安定した活力と輝きを取り戻すためには、すでに述べてきたように、まずは目先のデフレから抜け出すことを考えねばならない。しかし、それだけで十分と言うわけにはいかない。怒濤のごとくグローバル化が進み、しかも総人口が減少するというまことに厳しい時代においては、日本経済を担うべき新しい産業の興隆が不可欠である。政府としてはこの流れをつかみ、それを強力に支援する政策を早急に展開しなければならない。
■ 新産業を支援して空洞化による縮み≠乗り越える

日本の企業は、中国などをはじめとするアジア諸国や世界各地への生産拠点シフトを進めている。

人件費や部品調達コストを引き下げるために、世界のどこにでも工場を造り、世界のどこからでも部品や製品を調達する。それがグローバル化の流れであり、時代の流れであって、これに抗する道はない。だから、「空洞化阻止」のために徒にエネルギーを消耗するのではなく、さしあたりはこれを受け入れざるを得ない。その上で、より先端的な、より付加価値の高い新しい産業(サービス分野も含む)を興すべく、これを強力に支援することがきわめて重要になっている。

具体的な分野については、すでに行政においてもさまざまな提言がなされている。

たとえば一九九六年、当時の通産大臣の諮問機関である産業構造審議会・基本問題小委員会が「二十一世紀に向かっての新規・成長産業」を公表している。そこでは、次の一四分野が取り上げられている。

@住宅
A医療・福祉   
B生活・文化
C都市環境整備   
D環境   
E新エネルギー   
F情報・通信   
G流通・物流   
H人材   
I国際化   
Jビジネス支援   
K新製造技術   
Lバイオテクノロジー   
M航空・宇宙
■ プログラムの実行を加速する

これらは特に目新しいものではないが、重要なことは、いかにしてこれを具体化し、将来につながる新産業・サービスとして実を結ばせるかということである。報告書にはそのための処方箋が一三三本も示されている。

ところが、折角の処方箋が店ざらしとなっているように思われる。少なくとも、この分野における施策が、国民に周知され、ひろく信頼を得ると同時に、着実に振興の成果を挙げているとはとても思われない。

こうした分野に対しては、まずもって規制緩和をよりいっそう徹底すべきである。さらに、投資減税や加速度償却、必要とあれば資金的な助成策を含めて、思い切った支援策を講じるべきである。財源面ではもちろん大きな困難があるが、これは先行投資≠ニ考え、国有財産の売却収入などを当てればよい。「必ず結実させる」との決意があれば、やがては豊かな歳入源になるはずであり、米国や英国の経験がそのことをよく示している。

また、そうした施策が国民に周知徹底され、広く活用されなければならない。

そこで、新産業プロモーション・センター≠ニでもいうべきものを産・官・学共同で設立し、全国各地の中小企業、ベンチャー企業に広く支援の輪を展開すべきである。政策的支援措置はもとより、研究開発の関連情報の蓄積と提供、さらには広報活動などを展開する。場合によっては全国各地の起業家同士を結びつける縁結び役≠つとめる必要もあるだろう。意欲ある人々が路頭に迷わないためにはこうした仕組みが必要であり、これによって短時間で集中的に振興の実をあげるべきである。

■ より開かれた社会を求める

かつて英国は、金融ビッグバンに取り組む過程で英国経済のウインブルドン化≠敢えて許容する大胆な開放政策に踏み切った。その結果、シティは国際金融市場として復権するとともに、瀕死の状態にあった製造業も日本企業など外資の進出によって蘇生し、いまや欧州では突出した活力を持つ国に復位している。外資に対して門戸を開くことが、経済に活力を与える好事例である。

わが国も既存分野については対外開放が十分に進んでいるが、草の根≠ワで開放が進んでいるとは言い難い面がある。

特に、起業≠竍人≠ニいう面においてこれを進めるべきである。日本国内において新規に事業を立ち上げようとする動きに対しては、国籍の如何を問わず手厚く支援すべきである。これは中・長期的な経済活性化にも効果的であるし、当面のデフレ対応という点でも有効なはずである。さらに大学や研究機関などにおける基礎的研究分野での人的交流も経済活性化に大きく寄与するものと期待される。

■ コミュニティの復活が超高齢化時代をエキサイティングにする

社会保障・人口問題研究所の新推計によれば、総人口が減少に転じる分岐点は四年後の二〇〇六年である。特に減少スピードが速いのが二〇二五年までだという。人口が減れば、当然のことながら、高齢化が一段と進むことになる。それでは人口が減り、高齢者の比率が高まる状態でも、経済成長は可能なのか。

仮に人口が半分になっても、一人当たりの付加価値生産額が二倍に上がるならゼロ成長、二倍以上ならプラス成長になる。しかし、言うは易くして、実現はなかなか難しい。それを実現可能にする大きなポイントが、前述の産業政策であるが、いまひとつは高齢者と子供を中心にしたコミュニティの復活である。これが実現すれば、これまで考えなかったような新しい経済活動も生まれるだろう。

具体的には、例えば高齢者の生活を支援するためのグループハウスをつくる。そこには介護士やNGO的なサポーターなどが必要になる。ハウスで何かを生産することも可能だろう。近くの小学生や幼児をハウスで預かるサービスは、母親たちから大歓迎されるはずである。

これまでは公共セクターの人たちが中心になってやってきたことを、民間のビジネスとしてやるためのバックアップが必要となる。失われたコミュニティを取り戻す運動によって、地域の活性化や美化など多くの社会的メリットが期待できるはずだ。育児、託児、託老、介護といった面では、特に利点が大きいはずである。

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