| このデジタル化が、地上波放送の領域で法制化された経緯を、まずはふりかえりたい。
日本で地上波放送のデジタル化が政策的に公言されたのは、1997年のことである。3月、郵政省(現総務省)の幹部が「地上放送のデジタル化に向けた取組み」を発表。業界は騒然となった。
先に触れたように、デジタル化自体は時代のトレンドであり、放送においてもBSやCSなどのデジタル化計画はすでに進んでおり、遠くない将来に地上波もデジタル化の洗礼を受けるであろうことは業界内でも当然と考えられていた。が、郵政省の突然の計画発表は「2000年以前にデジタルでのサービスを開始する」というもので、その拙速ぶりに当の地上波テレビ各社は面食らったのである。
郵政省がデジタル化を急いだ背景には、欧米諸国が近いうちに相次いで地上波のデジタル放送を開始する(米英では1998年から実施)ことに対する焦燥感が根強くあったと思われるが、いずれにせよ実現性の検討を仔細に行う前に、早いタイミングでのデジタル化構想がうちあげられた。
2000年暮れから始まるBSデジタルへの参入を控えていた民放が、地上波デジタル化による更なる負担増を危惧してこれに反発。結局、郵政省と放送業界の思惑を調整するため「地上デジタル放送懇談会」を設立し、これにあたった。
上記の経緯で見る限り、この計画は成り立ちから準備不足の様相を呈していたことが伺える。そして何より、国民の意向を無視したところで、当初から議論がなされていたということである。
ともかくも1年数ヶ月の時を経て98年10月に「地上デジタル放送懇談会」の報告書がまとまり、デジタル化移行のプランが発表された。デジタル化導入については「これらの(註・アナログテレビジョンの)膨大な中継ネットワークでアナログ放送を並行的に行いながら、アナログ方式のネットワークに代替するデジタルネットワークを整備しなければならない」とした上で、基本的考え方として
1)アナログ放送からデジタル放送への全面移行を早期に実現する。その際、放送事業者の低コストでの移行が実現するよう配慮する。
2)行政当局及び放送事業者は、地上デジタル放送の放送対象地域別の導入スケジュール及びアナログ放送の終了時期の目安を可能な限り明確化するよう努める。
3)現行アナログ放送との周波数調整を少なくすることにより、円滑な移行を促進するとともに、アナログ放送を並行的に行いながらデジタル放送ネットワークを整備する既存事業者の負担に配慮する観点から、新規事業者の参入機会は、原則としてアナログ放送終了後とする。
4)衛星放送、ケーブルテレビ、地上放送の3つの放送システムが、デジタル化によって、それぞれの役割が発揮できるようにする。特に、地上放送については、既に国民に広く普及している基幹的放送メディアとしての役割が更に発揮できるようにする。
5)視聴者側が無用な混乱を生じることがないよう、行政当局、放送事業者、機器製造業者等の関係者が連携し、視聴者にとって円滑な移行方策の実現を図る。
と記している。
そして、具体的には概ね以下のようなスケジュールでデジタル化が進行することになっている。
・ 2003年末までに関東、中部、近畿の3大広域圏の一部でデジタル放送開始
・ 2006年末までにその他地域でのデジタル放送開始
・ 2011年に地上波アナログ放送の停止
このプランは電波法の改正案に内容として盛り込まれ、昨年の通常国会で承認された。つまり、2011年には、家庭にあるアナログテレビは、この法律が実施されれば全て使えなくなる。それまでの間に、各家庭・個人は、デジタル受像機への買い替えをしなさい、というのが、即ち国策としての地上波デジタル化の結論なのである。 |