
民主党政権は「マニフェスト」という政治用語の意味を変容させてしまった。無定見なポピュリズムの選挙用語であったことが露呈した以上、次回以降の選挙では使われないだろう。しかし、その残滓である子供手当や農家への個別所得補償や高校無償化は依然として財源なきバラマキ政策であり、高速道路無料化や八ツ場ダムの凍結と解除等による迷走は、国民にとって災難としか言いようがない結果となった。それなのに、野田首相は昨日の党大会で、マニフェストに関する反省や見直しについて触れていない。マニフェストという言葉とともにその欺瞞も葬り去ろうとしているのだろうが、ちょっと調子がよすぎはしないか。いきなり消費増税に「不退転の決意」「政治生命をかける」などの大げさな表現をされても、冷静には受け止められない。大げさな言葉も行動がともなわなければ、自己陶酔の空砲になるだけだ。
消費税はあくまでも目的である財政再建の手段の一つであり、手段が目的を追い越したような議論は本質を見えなくするだけだ。財政再建のためには、経済対策やデフレ対策はもちろん大前提だが、先ずは歳出削減に取り組むのが常道だ。与野党が協力して取り組むべきは、事業仕分けのようなパフォーマンスではなく、我々国会議員を含む公務員人件費の削減だ。民主党はマニフェストで国家公務員の人件費2割削減を言明し、その方法は業務の地方移管、手当・退職金水準・定員の見直し、だとしている。一方、自民党の公約でも、中小企業の実情を踏まえた公務員給与の引き下げ、自治体との重複排除による出先機関の廃止、間接業務の一括外部化、業務の無駄撲滅により、総人件費を2割削減するとしている。また、公明党の公約では、給与・諸手当・退職金・年金及び定員に関する一体的な法制見直しによる総人件費の抑制、非常勤職員を含む国家公務員の人件費全面公表と法定外福利厚生費の廃止を主張しているし、みんなの党のアジェンダは、国家公務員の10万人削減、公務員給与を2割カット、ボーナスを3割カット、退職金・年金の二重払いの差し止め等の対策により国と地方の公務員の総人件費を2割以上カットするとしている。従って、公約通りに実行すれば、公務員人件費削減へ向けての方向性に大きな違いはなく、与野党による話し合いは十分可能なのだ。
その試金石となるのが前国会に提出された公務員給与削減特例法案だ。私は自民・公明が共同で提出している法案の責任者として政府提出法案との修正協議に臨んだが、一方的に協議を打ち切ったのは民主党だ。政調会長会談で前原政調会長は柔軟な対応を約束したにもかかわらず、現場の責任者からは法案を成立させようとする意欲は全く感じられなかった。その結果、0.23%引き下げるとした人事院勧告さえも実施できず公務員給与は高どまりしたままだ。民主党は公務員組合と、給与引き下げとの引き換えに、別途提出されている公務員制度改革法案によると協約締結権付与と人事院廃止等を密約しているとはいえ、震災復興財源確保のための7.8%引き下げ法案に別の条件を加えるべきではない。従って、民主党が組合との密約を切り離して修正協議に臨めば、与野党合意は決して難しくないはずだ。野田首相には、国会議員の歳費や定数の削減を宣言する前に、昨年から積み残しているこの法案成立へ向けてリーダーシップを発揮してもらいたいものだ。消費税に政治生命をかけ、マニフェストを覆す勇気があるのなら、先ずは組合との密約はご破算にすべきだ。そうすれば、与野党協議への視界は一気に開ける。解散総選挙も恐れない野田首相にとって難しい決断ではないはずだ。また、本当の決断と実行に必要なのは、勇壮な言葉ではなく、粘り強い交渉を厭わない気力だ。開き直ったような発言を続けていれば早晩行き詰まることになる。その挙句の総辞職や解散では、結局何もできなかったことになるのではないか。